■ ボートに合った出力で、トランサム高さに合った船外機を選ぼう
 船外機をボートとのセットで購入する場合は、販売店に任せておけば、船外機とボートが正しくマッチングしたものにしてくれる。しかし、ボートだけを購入したり、譲り受けたりした場合は、船外機を別に購入することになり、注意が必要となる。
 まず、ボートの最大出力を超えない船外機を選ぶこと。次に、ボートのトランサム高さに適合するシャフト長さの船外機を選ぶことである。
 ボートには許容出力が決められている。ボートに貼ってある銘板に最大出力が記載されているはずだ。
 また、船外機ボートの船体の深さは一定ではない。ボートの船外機取り付け部分の高さは「トランサム高さ」と呼ばれ、スモールボートにもいろいろな「トランサム高さ」があるが、大きく分けて「S(ショート)トランサム」と中型ボートに多い「L(ロング)トランサム」に分かれる。それに対応する船外機の高さも、「Sトランサム」「Lトランサム」、もしくは、「Sシャフト」「Lシャフト」と呼ばれている。
 ボートがSトランサムであれば、Sトランサム(シャフト)の船外機、ボートがLトランサムであればLトランサム(シャフト)の船外機を取り付けなければならない。
 ボートと船外機の高さがマッチングしている様子を図に示すと次のようになる。
 この状態であれば、水位はアンチベンチレーションプレート(アンチキャビテーションプレート)と小プレートとの間にあるので、プロペラおよびウォーターインテーク部分には水が確実にあり、エアを巻き込むことがなく、性能を十分に発揮する。また、小プレートが、水のスプラッシュ(はね上げ)を防いでくれるようになっている。
 ボートに対し船外機が長い場合は、速度が遅くなり、操縦性も悪くなる。また、水のスプラッシュ発生や、浅瀬走行時のギアケース、プロペラなどの足まわりを壊しやすくなる。
 ボートに対し船外機が短い場合は、プロペラはベンチレーション(キャビテーション)を発生し、過回転となり、異常な振動も発生する。
 さらに、ウォーターインテークからエアを吸い込むことによって、冷却不足となり、オーバーヒートを起こしてエンジンが焼き付いてしまうことにもなる。
 トランサムのミスマッチングは、性能の低下のみか、致命的ダメージを受けることになるので、絶対に避けるようにしたい。
■クランプスクリューはマメにチェック
 船外機位置は船幅の中央にする。もし、左右にずれて取り付けると、直進安定性やマーナリング操縦性を損なう。
 クランプスクリューはしっかり締め付ける。クランプスクリューにはハンドルが取り付けられているので、これを握って締め付ければいい。
 クランプスクリューの締め付けが不十分であると、運転中に緩むことがある。また、締め付けが十分であっても、トランサムボードの材質によっては、振動によって緩んでくることがある。したがって、緩んでいるかいないかの確認と増し締めは、マメにやることが大切だ。

 船外機を水中に落とさないためには、船外機のドライブシャフトハウジングにロープを巻き(船外機の操舵に支障がないように)、そのロープの両端をボートに固定しておくことをお勧めする。
■始動前点検と始動準備
 海上で万が一、船外接が故障した場合、大きな事故につながる恐れがある。せっかくの釣りがオジャンにならないために、ほんの僅かな時間でいいので、最低でも次のような始動前の点検は、必ず行うくせをつけよう。

○燃料タンクに燃料が入っているか?
 その日の運航スケジュールを基準にして、必要量の燃料プラスアルファを入れる 2サイクルエンジンの場合は、エンジンオイルを混合した自動車用レギュラーガソリン、4サイクルエンジンの場合は、ガソリンだけを給油するが、エンジンオイルが規定量入っているかどうかもチェックしなければならない。
○燃料タンクのエアベントスクリュー(空気抜き)を緩めたか?
 タンク内に空気を入れてやらないと、燃料はキャブレターに流れていかない。
○燃料コックを開けたか、燃料コネクターをしっかり結合したか?
 燃料タンクが本体の外にあるタイプは、始動させる前に燃料の圧送(プライミング)をしなければならない。プライマーバルブの握ったり放したりを繰り返し、このバルブが固くなったらオーケー。

○燃料漏れはないか?
 ガソリンは非常に気化、引火しやすい危険物である。タンク、タンクキャップ、コネクター/コック、ホースなどの燃料系統部品から燃料漏れはないかをよく確認する。
 もし燃料漏れを見つけて、完全な処置ができなかったら、始動をあきらめて販売店に持ち込み、修理をしてもらわなければならない。
○シフトレバーはニュートラルになっているか?
 2馬力船外機では、ヤマハ、ホンダ、トーハツとも、シフトレバーがない直結式(エンジンが回転するとプロペラが回転する)となっている。このタイプはスロットルを「スタート」位置にし、エンジン始動後直ちに低速に戻さなければならない(図★★★)。プロペラがいきなり回転してしまうため、多少急発進気味になるので注意したい。乗船者の転倒や落水事故につながることが多い。
 マーキュリーの2馬力船外機は例外で、シフトレバーがある。始動時は、これをニュートラルの位置にしてから始動する。
 2馬力を除くすべての船外機は、シフトレバーをニュートラルの位置にしないとエンジン始動できない機構となっている。
○緊急停止コードを身体に取り付けたか?
 船外機は、緊急停止コードをエンジンのキルスイッチに繋いでおかないと、エンジンは始動しないようになっている。
 この緊急停止コードを身体に付けずに運転し、落水した場合は、エンジンが停止せず暴走の危険がある。始動時及び運転時にはこのコードの先端を操縦者の身体に取り付けなければならない。
○スロットルを「スタート」位置にしたか?
 スロットルグリップ(もしくはレバー)には「スタート」マークがついている。始動時はこの位置に合わせる。
○チョークを引いたか?
 エンジンが冷えている時の始動は、濃い混合気(ガソリンと空気)をたくさん与えないと始動しない。チョークを引くのはこのためであり、当然、始動後はチョークを戻さなければならない。
 もし、チョークを戻さなかったり、戻しが遅いと、燃料を飲み過ぎてエンストしてしまう。飲み過ぎエンストは、スパークプラグの濡れや過渡混合気のために、再始動が非常に困難になる。エンジンが暖まっている状態では、チョーク操作は必要ない。
■ちょっとコツが要るスターターロープの引き方
 さて、いよいよエンジンの始動だ。
 始効用のリコイルスターターは機構上スグレモノなのだが、ちょっとしたコツが要る。
 スターターハンドルは引っかかりを感じる所までゆっくり引き、重くなった所から.気に力強く引く。
 エンジン始動までこれを繰り返すが、10回程度引いても始動しない時は、何か始動しない原因があるはずだ。
 例えば、前述の燃料飲み過ぎが考えられる。この「適切な混合気」のほかに、「確実な圧縮」と「強い火花」を加えた3つが始動のための条件だ。したがって、圧縮漏れがあっても、火花が弱かったり出なかったりしても、始動しない。
 よく見受けられる悪い引き方は、スターターハンドルをガーンと最初から一気に引っ張ること。この場合、リコイルスターター部品に大きな衝撃が加わり、部品の寿命を著しく縮めてしまう。
■陸がけはやらない
 安心を得るために、ボートを水上に浮かべる前にエンジンをかける人がいるが、この水無し運転は、水冷式エンジンだと、焼き付きという致命傷を引き起こすのでやめよう。
 水冷式エンジンの冷却水系のポンプインペラはゴム製であり、水がない条件下で運転すると、即、インペラの異常発熱で損傷してしまう。出航時には冷却水が出ていたとしても、運転するにつれてインペラのダメージが進行し、エンジンのオーバーヒート、焼き付きとなるわけである。
■簡単な前進、後進、停止
 いざ走り出した後は、ハンドルでの舵取りと、ギアチェンジくらいしか操作はなくなるので、ここでは大した注意ポイントはない。
 ただ、エンジンの回転数が高い状態でのシフト操作は、急加減速による同乗者の転倒を招いたり、ギア、クラッチなどを壊すおそれがあるので、やらないように。
 シフトレバーが付いていない船外機の場合、船外機本体はシャフトを中心に360度ぐるりと回るようになっている。後進の時は、船外機のハンドルごと180度向きを変えることになる。慣れないとスムースにいかないので、多少練習しておきたい。
 停止する時は、スロットルグリップ(レバー)を最低速に戻し、エンジン回転が下がったらシフトレバーをニュートラルに。そして、ストップスイッチをエンジンが止まるまで押し続ければいい。ストップスイッチロックを引き抜いてもいい。
■走りに大きな影響!トリム調整

 ボートのトランサムボード角度は12度が一般的だが、異なるものもある。船外機の性能を十分に発揮させるには、全速走行時にアンチベンチレーション(アンチキャビテーション)プレートが水平にならなければならない。この調整はスラストロッドの位置を変えることにより簡単にできる。
 では、トリムの適正、不適正により、ボートがどのような状態になるか考えてみよう。

○トリムが適正の場合
 走行中ボートはほぽ水平状態にあり、左右の操舵力もほぼ均等。

○トリムアップのし過ぎ
 走行中、船首が上がり、振られてしまう。船外機のプロペラが右回転のため、ボートは左旋回気味となる。したがって、右に曲がりにくくなる。この場合はスラストロッドを下方に移動する。
○トリムダウンのし過ぎ
 走行中、船首が沈み、波をかぶりやすくなる。トリムアップし過ぎとは遂に、ボートが右旋回気味となり、左へ曲がりにくくなる。この場合はスラストロッドをト方に移動する。
■ボートに持っていたい工具と部品
 海上で船外機トラブルになった場合、その修復には工具と部品が要る。ここではボートに積み込んでおきたい工具と部品を挙げておく。

【工具】
 スパークプラグレンチ、プライヤー、マイナスドライバー、プラスドライバー、10×13または10×12または10X14ミリメートルソケットレンチ(船外機により異なる)、リコイルスターターが取り外せる工具。

【部品】
 スパークプラグ、プロペラ、プロペラナット&スプリットピン、プロペラ用シャーピン(2.6kW以下の船外機はシャーピンタイプが多い)。

【その他】
 始動用ロープ、針金、布切れ、予備燃料、取扱説明書、法定備品。

 荒天に見舞われたら、周りに船がいなかったら、陸上への連絡手段を持っていなかったら、風や潮に流されたら……海の上のエンジントラブルは、非常にシリアスな状況であると認識しよう。
 しかし、ちゃんとした整備、まめな点検、正しいハンドリングがあれば、トラブルは避けることができるし、船外機の寿命も延びる。
 これを機会に、ご自身のエンジンヘの接し方を見直していただきたい。
 

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